声に出して読みたい国産鉱物
□はじめに
個人的に名前の響きがかっこいい、面白いと思う国産鉱物の一部を紹介したい。極力、音だけで選んだつもりではある。なお正式な鉱物名は英語で日本語での正式名は存在しないので、ここで紹介する和名(俗称)はあくまで一つの表記に過ぎず、表記ゆれが存在する点には注意されたい。
□鉱物紹介
デュフレノイ鉱 Dufrenoysite Pb2As2S5
名前がオタクっぽい。サルトリ鉱族の硫塩鉱物で、フランスの鉱物学者Armand Dufrenoyの名前を冠する。同様にデュフレン石Dufrenite Ca0.5Fe2+Fe3+5(PO4)4(OH)6·2H2Oも彼の名前が由来である。日本では奥戸鉱山でのみ産する。
ウチュクチャクア鉱 Uchucchacuaite AgMnPb3Sb5S12
「中瀬鉱」ことアンドル鉱Ⅵと同じリリアン鉱族に属する硫塩鉱物。模式地であるペルーの地名が名前の由来。日本では稲倉石鉱山と洞爺鉱山において確認されている。
ザバリツキー石 Zavaritskite BiOF
国内では自然蒼鉛の周囲に白雲母に囲まれるような産状で産する。名前は強そうだが灰色~黒色っぽい土状の地味な見た目をしている。
ヴォーレライネン石 Vuorelainenite Mn2+V3+2O4
スピネル超族酸化スピネル族スピネル亜族(2-3スピネル)の一種。日本ではマンガン鉱石中に産するスピネルとして発見され、3か所のいずれの国内産地もマンガン鉱山である。
ジャーリンダ石 Dzhalindite In(OH)3
世界で16種しか確認されていないインジウムを成分にもつ鉱物の一つ。日本では河津鉱山でのみ確認されている。
ジャクスディートリッヒ石 Jacquesdietrichite Cu2BO(OH)5
筆者が名前のかっこよさの点で最も好きな鉱物。世界でもモロッコの模式地と日本の布賀鉱山のみでしか確認されていない希産鉱物である。
ラウテンタール石 Lautenthalite PbCu4(SO4)2(OH)6·3H2O
サーピエリ石などが属するデビル石族の鉱物。デビル石Devilline CaCu4(SO4)2(OH)6 ·3H2OのCaをPbで置換した鉱物である。日本では亀山盛鉱山と新井鉱山で確認されている。
パレンツォーナ石 Palenzonaite (NaCa2)Mn2+2(VO4)3
バナジウムみを感じる赤が特徴的である。石榴石超族ベルツェリウス石族に分類されており、広義の「ガーネット」といえるだろう。日本では大和鉱山と白丸鉱山においてのみ確認されている。
ネオジムウェークフィールド石 Wakefieldite-(Nd) NdVO4
REE(希土類元素)がすでにかっこいいのでそれによる補正はあるが、それにしてもかっこいい名前。模式地が有瀬鉱山の日本産新鉱物。鉄マン中に存在する。
ヴィータニエミ石 Viitaniemiite NaCaAl(PO4)F3
名前の由来は模式地であるフィンランドの地名。CaのMn置換体が巷で噂の桐生石である。日本では長垂と津久原において確認されている。
ミゲルロメロ石 Miguelromeroite Mn5(AsO3OH)2(AsO4)2(H2O)4
元々ビリヤエレン石Villyaellenite (Mn,Ca)Mn2Ca2(AsO3OH)2(AsO4)2·4H2Oとされていたサンプルを再調査した結果、新たに確立された新種。その際、御斎所鉱山産ビリヤエレン石もミゲルロメロ石に該当すると判明し、副模式地として登録された。
ウォールキルデル石 Wallkilldellite Ca2Mn2+3(AsO4)2(OH)4·9H2O
ローマ字のlがやたら多い。とりあえずlは2つ書けばいいと思ってる。日本では御斎所鉱山でのみ産出が確認されている。
灰灰ベトパクダル石 Betpakdalite-CaCa [Ca2(H2O)17Ca(H2O)6][Mo6+8As5+2Fe3+3O36(OH)]
灰灰(かいかい)はカルシウムのこと。日本では南生口鉱山でのみ産する希産鉱物で黄色い粉末状の見た目をしている。世界では他にも灰苦(CaMg)、鉄鉄(FeFe)、曹灰(NaCa)、曹曹(NaNa)が存在するらしい。
銅スクロドフスカ石 Cuprosklodowskite Cu(UO2)2(SiO3OH)2·6H2O
先に発見されたSklodowskite(銅スクロドフスカのCuをMgに置換した鉱物)は、キュリー夫人の旧名(Sklodowska)にちなんで付けられた。日本では剣山鉱山においてのみ確認されている。
□おわりに
名前のかっこいいものを改めてあげてみると、どうしても希産鉱物になりがちであった。こういった希産鉱物を含め日本で数多くの鉱物が発見されているのはアマチュア採集家によるところが大きく先人たちの努力のおかげである。
□参考URL
https://www.mindat.org https://rruff.info/ima/ https://mdcl.issp.u-tokyo.ac.jp/denken/