敬語不使用の文化
文責:Uehr
吉田寮では“敬語不使用の文化“というのがあります。1回生が院生に平気でタメグチをきくといった光景はこの文化を知らない人にとっては刺激的かもしれません。しかし、吉田寮の文化・生活はこの“敬語不使用の文化“なしに語れないのです。
”敬語不使用の文化“というのはその名の通り、年齢・学年を問わず敬語を使わないことを推奨するという文化です。決して強制ではなく、敬語を使う寮生も少数います。
私がこの寮に入寮したのは2021年の秋なのですが、入寮して「敬語」がどれほど人間関係の在り方に影響を及ぼすかを改めて実感しました。皆さんも考えてみてください。学校の先輩、後輩、どんなに仲が良くてもやはりクラスメイトとのような親しい、気の置けない関係はそう簡単に築けません。敬語はどうしても人間関係に一定の距離を作ります。それがダメなのか、といえばそうでもないのですが・・・
でも、やっぱり敬語を使う相手には気も遣います。気を遣うほうも遣われるほうも、多少なりとも神経をすり減らすものです。普段自分の暮らす「家」くらい、リラックスしたい、気を遣いたくないですよね。
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この“敬語不使用の文化”の誕生の経緯には諸説あるようですが、「議論に参加するものはみな対等な立場にあるべき」という考えが誕生の由来というのが有力な説のようです。寮では委員会など寮の機関の会議をはじめ、プライベートでも議論をする機会がたくさんあります。確かに、立場に上下関係があると、下の立場の者は積極的に意見しづらい雰囲気やプレッシャーのようなものを感じたり、上の立場の者に妙に気を遣ったりして、結果的に議論の質を低下させることになると予想されます。そうした問題を解決するのに“敬語不使用の文化“は大きく貢献していると私は思います。
でも、“敬語不使用の文化“は議論の質の向上だけではなく、吉田寮の文化、寮生活にも大きく影響していると思います。吉田寮で体験できるみずみずしい人間関係は、やはり”敬語不使用の文化“によるものだと思うのです。吉田寮では同回生でなくても、1個上、2個上、7個上・・・、何回生とでも友人になれます。いや、同じ「家」で暮らす者同士、友人というよりむしろ家族というべきかもしれません。寮には100人以上の寮生がいるので、面識のない人、1度も話したことのない人だっています。でも、全くの他人なんて思わない、そんな人ともなにかつながりのようなものを感じます(それこそ家族のような、遠い親戚のような・・・)。なにはともあれ、年齢・学年を気にせず誰とでも垣根のない人間関係を構築できるというのは大変魅力的ではありませんか。
入寮してすぐの時期は“敬語不使用“というのに違和感を覚えるかもしれません。長年の習慣・慣例から数日で脱却するというのも無理がありますし、はじめのうちは年上、上回生に対し(時に無意識に)敬語を使うこともあるでしょう。でも、敬語の習慣から脱却し、”敬語不使用の文化“になじめれば寮生活のQOLは格段に向上すること間違いありません。そしてこの文化に慣れてしまえば、年齢・回生を気にしない人間関係というものの快適さに気づくことでしょう!
私が初めてこの寮に来たのは2019年の11月、高校2年生の秋でした。当時は200円のカンパを払えばだれでも吉田寮に宿泊できました(今はコロナ禍の影響で宿泊はできないのですが…)。私はそんな噂を聞きつけ、ぜひ一度変人の集う京大の寮に泊まってみたいと思い立ち、はるばる千葉から鈍行を乗り継いで来たのですが、その時の体験は今でも鮮明に記憶しています。なかでも寮生たちの暮らしぶり・関係性、寮の雰囲気がいわば「家族」のような温かさを持っていたことに深く感銘を受けたことをよく覚えています。その魅力に引き込まれて志望を東大から京大に変更し、ついには私も吉田寮に入寮することとなりました。
このパンフレットを手に取っている人の中にはこれから大学生活が始まる新入生の方も多いでしょう。そのなかには遠方から京都に出てきたという人も少なくないはずです。そんなあなたは実家から離れての新生活に不安を抱えてナーバスになっているかもしれません。でも、もしこの寮に興味を持っているのであればぜひ一度寮に遊びに来てください。不安なことがあれば寮生が相談に乗ってくれると思います。みんなより一足早く、友達を作ることだってできるかもしれません。また、寮に住んでみたいと思ったら思い切ってぜひ入寮してみてください。そしてぜひ、“敬語不使用の文化”というものを体験してみてください。寮生活はとても楽しく、魅力的です。寮の居心地の良さ、寮生との交流の楽しさには病みつきになります(楽しすぎるあまり休学したり、学業がおろそかになって留年する人も多いのですが・・・)。なにより、帰ったとき「家」に「家族」がいるというのは、寮の最大の魅力だと思います!