大学は利権のためにあるのではない

法学研究科 髙山 佳奈子

 目下、国立大学法人を武器商人の道具にしようとする改革が強行されつつありますが、すでに吉田寮スラップ提訴の時期から、同じ問題が顕在化していたといえます。提訴時の川添信介学生担当理事は、寮を取り壊して収益性のある事業を立ち上げようとしていました。その後すでに、女子寮の家賃が民間の住宅並みに高くなってしまいました。

 しかし、このような動きは、現在、社会的非難を浴びています。日本の学術の国際競争力が低下したのは、2004年以降の国立大学の法人化による予算・人員削減を始めとする、大学を利権のための道具化する動きによることが明らかです。「防災・海洋政策担当大臣」の下での日本学術会議の実質的な取り潰しも同じです。

 金や権力に執着する一部の人の、専門知識を欠く考えにより、推進すべき研究分野が特定され、他が切り捨てられようとしています。これは金儲けにすらならず、防衛関連産業の一部の利権に直結するだけです。

 研究者は特定の「ステークホルダー」のために働いているのではありません。真実の探求と将来の人類の福祉のために働いています。

 内外から優秀な学生を採用しようとするなら、裕福な者だけをターゲットにしてもレベルが下がるだけです。経済的な困難を抱える者でも住める寮と自治とがあることによって、仕事をやめて法科大学院を目指す者や、留学生などの多様で優秀な層が京大に集まるのです。寮とその自治に対する攻撃は研究・教育の水準に対する攻撃です。